清水南山展から(作品解説 その2 加納夏雄《四季の花寄せ やんぽ》)

加納夏雄(文政11-明治31)は誉れ高い名匠で、幕末は多くの鐔や目貫などの刀装金具を制作して人気を博しました。維新後は明治2年から数度にわたり明治天皇御剣の装飾金具を制作し、明治2年から10年の間は大阪造幣寮で明治新貨幣の意匠・原型・極印製造などに携わり、以後は内国勧業博覧会出品等で活躍し、明治23年に東京美術学校に起用され、帝室技芸員に任命されました。彫金技法のうち特に陰影表現豊かな線刻である片切彫(かたぎりぼり)に新生面を切り開き、装剣金工の精華を明治の世に伝え、生かしました。

清水南山が最も影響を受けた恩師で「自分を空しくして、ひたすら(夏雄)先生について勉強する事が出来た我々は誠に幸福だった。先生の御親切が今もなお身にしみる」としみじみと語っています。また、その制作の様子を「(夏雄先生が)学校へおいでになると校庭に咲いているスミレやタンポポ等を摘んで来られては手板(手本)を刻られた。其の様な時良く見ていると、先生のは下画に非常に長い時間を要して、一度刀を手にするときわめて短時間に彫りあげられた」と回顧しており、四季の花々が墨画のようなタッチの片切彫で彫刻された本作も、入念なスケッチによる形態把握の末、鮮やかな手並みで彫られたものなのでしょう。

ちなみに銀製「やんぽ」に関して南山の先輩にあたる弟子の一人が「(夏雄)先生居常大に質素倹約を旨とせられ家財を蓄積し決而資を他に求めず、亦一回も社交的交誼をなさゞりし故時人為に加納の「ケチンボ」と陰口をなす程なりき。先生登校の際弁当は必ず腰弁にして、器物(弁当箱)は銀の「ヤンポ」なれ共握飯に質素の副食にして決而奢りがましきことあらず」と思い出を語っています。質素で倹約につとめ、制作のための資金を他人に求めなかった堅実で毅然とした人柄がしのばれます。

このほか、加納夏雄の作品では《鯉魚図鍔》(東京国立博物館)、《片切彫手板》(東京藝術大学)、《明治通貨(金・銀・銅貨)》(造幣博物館)などを展示しています。

加納夏雄《四季の花寄せ やんぽ》7.3×11.5×高4.8㎝ 銀・片切彫 清水三年坂美術館

彫金家 清水南山 -広島が生んだ近代金工の巨匠
1月6日(金)~2月12日(日)

リニューアル・オープン20周年記念
「続・広島県立美術館ベストセレクション展」
「平成27年度新収蔵品ご紹介!」
12月22日(木)~4月16日

miyamoto の紹介

学芸員 宮本真希子

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