清水南山展から(作品解説 その3 清水南山《大森彦七図鐔(写)》)

装剣金具によって洗練された日本伝統の彫金技術の伝承を第一義とする東京美術学校(現東京藝術大学)彫金科では、装剣金具の摸刻が主たるカリキュラムでした。本作は南山が東京美術学校卒業制作として摸刻したものと伝えられます。原作は奈良利寿(ならとしなが、江戸中期の金工師)で表裏に大森彦七が鬼女を背負う図を表し、鉄を彫り崩して高肉浮彫とし、彦七の顔と足は赤銅(しゃくどう)、鬼女の顔と手足は四分一(しぶいち)、髪は赤銅、着物の模様を金・銀で象嵌したもの(赤銅は銅と金の合金で酸化により黒色を、四分一は銅と銀の合金で酸化により灰色を呈する)。
「(東京美術学校彫金科教授の加納夏雄は)生徒に鐔(つば)を彫らせても決して完成させずに、中途で仕事をやめさせた。それは生徒を思って下さる深い心からの為であって、若し完成させてそれを金(かね)にでもする様な事があっては、前途ある学生が道をふみはずす元になると心配されたからであった」と南山は語っています。師の夏雄は、摸刻は技術習得のためであって創作ではないことを教えたのでしょう。本作は完成されていますが、南山は師の教えを守り、売却することなく生涯手元に置き、遺族に伝えられました。原作者・奈良利寿(ならとしなが)について、夏雄はその講義録『金工鑚業講話』(清水南山筆記)の中で「奈良家にての名人にして鑚(たがね)つよく働き有ていさぎよくさわがしからず奈良の三作の第一の良工也」と高く評価しており、明治26年夏秋頃授業でこの現物が教材として使用されたと受け取れる記述があり、東京美術学校研究科課程の課題の一つともしたようです。

清水南山《大森彦七図鐔(写)》表

 

清水南山《大森彦七図鐔(写)》裏
明治28-9年頃 7.4×7.4×厚0.6㎝ 鉄・金銀象嵌・高肉彫
個人蔵 画像提供:東京国立博物館 Image:TNM Image Archives

 

彫金家 清水南山 -広島が生んだ近代金工の巨匠
1月6日(金)~2月12日(日)

リニューアル・オープン20周年記念
「続・広島県立美術館ベストセレクション展」
「平成27年度新収蔵品ご紹介!」
12月22日(木)~4月16日

 

miyamoto の紹介

学芸員 宮本真希子

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