清水南山展から 作品解説 その4 清水南山《山水図対花瓶》2対

清水南山展から 作品解説 その4 清水南山《山水図対花瓶》2

山を行く、歩くことは南山の人生を象徴しています。少年時代に峠を越えて隣町の小学校に往復4里の路を不自由な足で徒歩で通ったこと、不惑の年に一念発起して病後の身体に鞭打ち四国霊場88カ所を40日間ほぼ踏破したこと、続く奈良での古美術研究では宿舎の法隆寺から東大寺まで往復8里の路を徒歩で3週間通い続けたこと、などの行動が物語ります。また、無類の登山好きで、昭和天皇御即位式用御剣の制作という重任を担っている最中でさえ、日本アルプスに赴き行方不明になって周囲を心配させたエピソードも伝えられています。楽をすることなく一歩ずつ目標に到達することは、謹厳な南山の生き方そのものであり、山水に包まれて自分自身に向き合う、なくてはならない時間だったのでしょう。日本画家・平山郁夫の大伯父であり自身優れた画家でもあった南山は、そのような折に目にし、脳裏に焼き付いたであろう山水の景色を、特に数多く描いています。

菊の御紋章が、皇室ゆかりの来歴を持つ作品であることを示しているこれら2対の花瓶は、山水の景色を彫金により表現したものです。銀地に金や朧銀(おぼろぎん、銅と銀及び金の合金で、合金比率により灰色の濃淡の酸化色を呈する)・素銅(すあか、純銅、酸化で赤褐色に発色)など各種の色金(銅や銅合金の酸化色による色彩表現)を用いて紋金(もんがね、象嵌するために成形された金属片、嵌め金)を成形し、平象嵌(平らに嵌めこむ)、高肉象嵌(レリーフを嵌めこむ)など高低表現を調整しつつ、色彩と立体処理をあわせて、遠近の空間表現を行い(近景は明確に、遠景はやや淡く)、楼閣山水の静謐な絵画世界を理知的に表現しています。これらの作品もこのたび広島初公開で、意匠・技法の観点から南山の彫金における作域の広さを改めて認識する上で、貴重な機会となりました。

清水南山《山水図対花瓶》昭和3年 各径14×32㎝ 銀地・金朧銀素銅・高肉象嵌 清水三年坂美術館

清水南山《山水図対花瓶》昭和3年 各径14×32㎝ 銀地・金朧銀素銅・高肉象嵌 清水三年坂美術館

 

彫金家 清水南山 -広島が生んだ近代金工の巨匠
1月6日(金)~2月12日(日)

リニューアル・オープン20周年記念
「続・広島県立美術館ベストセレクション展」
「平成27年度新収蔵品ご紹介!」
12月22日(木)~4月16日

miyamoto の紹介

学芸員 宮本真希子

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