夏目漱石展の会場最新レポート~展示替を行い、新しい作品がお目見えしました!~

会場風景

現在、好評開催中の『夏目漱石の美術世界』展(~5月6日まで)。会期は42日間と長くはないのですが、作品のコンディションに問題が起こらないよう、紙や絹の作品を中心に会期中に何度も展示替を行います。

このたびは、4月13日に一部作品を展示替。新しく会場に並んだ数々の作品の中から、人気作品の一部をご紹介してみたいと思います。まずは、今村紫紅の《近江八景》(1912年 東京国立博物館蔵 【重要文化財】)。月明かりに照らされた石山寺山内を、しっとりとした色調で表した「石山」と、点描風の表現をアクセントに、爽やかな色遣いで水辺の情景を描いた「矢走」のニ幅を展示します。本作を見た漱石は、大正の近江八景として後世に伝わるかどうかは疑問だと述べつつも、「兎に角是迄の近江八景ではない」とその独創性に注目しています。第6回文展で二等賞を受賞した本作は、伝統にとらわれることなく、革新的な日本画を求めた作者が、初めて描いた本格的な風景画で、新しい日本画のあり方を示した作品と高く評価されています。

 

左が今村紫紅《近江八景》。右は、通期展示の佐野一星《ゆきぞら》(京都市立芸術大学芸術資料館蔵)。漱石は、画面全体が枝だらけで、枝全体が鳥だらけなのが面白い、と好評を残しています。

洋画家の作品では、浅井忠の《ベニス》(1902年 東京国立博物館蔵)が登場。浅井は、漱石とも親交があり、『三四郎』に登場する画家・深見に当たると考えられています。小説の中で、深見先生の遺画を見た三四郎は、その水彩画が少ない色数で抑えた色調で描かれていること、運筆がすばやくほとんど一気呵成に描き上げていることなどに目を留めています。本作の翳ったような控えめな色彩と、ためらいのない筆の運びには、三四郎の言葉がそのまま重なるようです。

浅井と二人、ロンドンの町を歩いた漱石は、浅井の建物を見つめる視線と、その色彩感覚について回想した印象深い文章を書き残しています。敬愛する浅井の作品に対して、三四郎の言葉を借りて行った漱石の批評、作品とともに、ぜひ会場で味わっていただければと思います。

 

浅井忠《ベニス》。作品の傍には、キャプションとともに漱石の文章を解説パネルとして付しています。

現在展示中の作品も、20日の展示替で一部の作品が入れ替わります。すでにご覧いただいた方々も、新しい作品に出会うために、ぜひもう一度ご来館ください。お待ちしています!

夏目漱石の美術世界展 ~5月6日(月・振休)

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