環境教育

「環境教育」に関連した美術作品の鑑賞

題材について
 環境学習については学習指導要領の第1章第4の3に総合的な学習の内容として例示されている。それは「環境・エネルギー問題に対する対応については、環境・エネルギー問題に対する社会の関心が一層高まる中で、環境やエネルギーについて理解を深め、環境を大切にする心を育成するとともに、環境の保全やよりよい環境の創造のために主体的に行動する実践的な態度や資質・能力を育成することが大切である。」(中学校学習指導要領の展開 総合的学習編 山極隆 明治図書 1999)というように環境問題が今日的な課題の最重要項目の一つと考えられるからであろう。
 佐伯育郎(広島文教女子大学)は「環境保全・環境対策としては、自然科学からのアプローチが最も効率的」としながらも「環境教育における知識・理解面の中心的教科が理科や社会科などとすれば、環境の質の改善のための実践的な技術や態度面、その基盤となる感受性などを、実体験を通して育成するのが美術教育の主要な役割といえる。環境問題に関する知識を伝達するだけでは環境教育として成立しえないと肝に銘じて、他教科と同様美術教育においても、環境教育を積極的に実施していく工夫が必要である。」(図画工作・美術科 重要用語300の基礎知識 明治図書 2000)と述べている。
 そこでこれを美術の「鑑賞」の領域で考え、県立美術館収蔵作品の中からその題材にふさわしいと思われる作品をリストアップしてみた。ひとつは日本人が自然に畏敬の念を持って生活し、その美しさと力強さを表現しようとした作品。そして自然からの恵みを受けるために自然と完全に調和しようとした生活史を記録した作品。これは四季折々の自然の美しさを作家の目を通してとらえたものでもある。また身辺の小動物などに対してもそそがれる生命に対する深い慈しみのまなざしを有する作品を選んだ。もうひとつは環境問題に対してするどいメッセージ性を持った作品、またそうした活動を行った作家の作品を選んだ。
環境学習は美術作品の鑑賞の視点からいえば、現代美術において環境問題をテーマとして取り組んでいる作家の活動をのぞいてはアプローチしにくいものといえるかもしれない。しかし古代より美術の表現者たちはそのモチーフを自然の中に求めてきた。現代に至っても自然と向き合う作家たちは自然の雄大な力に対して美を見いだし、敬虔な気持ちでそれを表現しようとしていると思う。
 自然の美しさやそこに美を見いだした人々の営みは、公害や地球温暖化の問題などと直接は結びつきにくいものかもしれないが、環境問題を考えていく上で見落としてはならない視点ともいえるのではないだろうか。
「総合的な学習の時間」における「環境教育」の中では導入として、自然の美しさを作品を通して味わうことや、多くの作品の中から「自然美」「自然と共生してきた人間の営み」「自然破壊に対するメッセージ」などの視点で作品を選ばせて鑑賞させることが考えられる。またそこから生徒の興味・関心のある事柄について、たとえば「自然と調和しながら生活していく生き方」や「無公害エネルギーの有効利用」「環境問題に対しての問題提起―美術家の活動を通して」などのテーマを持たせて課題解決にむけての学習に発展させていくことができるのではないかと考える。

 「環境教育」に関連した美術作品 PDF8KB

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