国際理解

「国際理解」に関する美術作品の鑑賞

題材について
 「国際理解」は「環境教育」と同様学習指導要領が例示する総合的な学習の時間の学習内容の一つである。
また、学習指導要領美術編においてその解説では「各国に残る遺産としての美術文化の違いと共通性を理解し、価値あるものとして互いに尊重し合っていこうとする態度を培うとともに、それらを積極的に保存していくことに関心をもつことは大切である。「美術を通した国際理解」とは、そうした活動を通して美術が文字や言葉では表し得ない優れた表現手段であり、深いコミュニケーションの手段であることを認識し、自国の文化のよさを理解してもらえるように説明したり、他国の文化を共感的に理解したりすることができるようになることである。」と述べられている。
 ここには「国際理解」が横断的・総合的な課題としてとらえられている中で、美術の果たすべき役割の重要性が示されていると思う。さらに美術編解説には「「日本及び諸外国の」における鑑賞の対象としては特に日本とアジアについても重視する必要がある。一般に、西洋の美術については関心も高く、よく知っているが、日本や文化面で日本とかかわりの深いアジアについては関心が低い傾向にある。日本の美術の源流を考える上で歴史的、地理的に深いかかわりをもつことからアジア諸国、遠くはギリシャをも含むいわゆるシルクロードといわれる伝搬にかかわる国々の美術にも目を向ける必要がある。」と述べられている。
 広島県立美術館の作品収集の重点方針の②は「日本とアジアの工芸作品」である。主な収蔵作品は日本では近・現代の陶芸作品、漆芸、金工の作品。アジアでは中央アジアの染織品と金工品、インド及びインドネシアの染織品がある。
 「総合的な学習の時間」の「国際理解」では、例えば広島県出身(大柿町)の六角紫水の「線のすさび忍冬図丸盆」という作品を1点取り上げてみても
・漆はヨーロッパで陶磁器が「チャイナ」と呼ばれるのに対し「ジャパン」と呼ばれ高い評価を受けている。
・六角紫水は朝鮮半島の楽浪漆器を研究し本作品もその研究の成果として制作されたものである。
・「忍冬図」はパルメットともいいエジプトからギリシャ、ペルシャ、中国を経て日本にもたらされた。古墳時代の馬具や玉虫の厨子にも見られる。
・六角紫水は岡倉天心、横山大観らと渡米、ボストン美術館で工芸品の整理、修復にあたっている。
など、作品(素材、技法、図柄)から作者の経歴まで、知っていくと興味が尽きない。
 美術だけでなく歴史や技術の面でもそれぞれの教科と連携を図りながら学習を進めていくことが可能である。収蔵作品ではないが、企画展として「日本伝統工芸展」も開催しており、それぞれの地域で創作活動をしてい
る工芸家の作品を鑑賞したり、伝統を学んだりすることも「国際理解」に通じるものと思う。
 ほかに広島県立美術館には、「仏教伝来」や「シルクロード」をテーマとした平山郁夫、明治中期移民船で渡米し広島の洋画の先駆となった小林千古、フランスに住み世界的な評価を得た菅井汲の作品など数多く収蔵している。生徒たちは自分の興味・関心に基づいて、さまざまなテーマを設定して学習に取り組むことができると思う。

 日本及びアジアの工芸品 PDF5KB
 アジアの工芸関連地図 PDF114KB

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