所蔵品
所蔵品

受胎霊夢

平山郁夫《受胎霊夢》
祖母の兄清水南山の薫陶を受けて東京美術学校に進学した平山は、卒業後しばらく、瀬戸内の風俗を描いて院展入選を重ねるが、一方では画業の展望に悩み、被爆の後遺症にも苦しむようになっていた。そのような状況を打破しようと、苦難の果てにオアシスに辿り着く玄奘三蔵の姿を描いた《仏教伝来》を発表する。以降、仏伝やシルクロードの風景などにロマン性と詩情を持ち込んだ清新な作風により、「幻想画」という新たな展望を拓いていく。
 本作品は、胎内に白象が入る夢をみて釈迦を懐妊したという摩耶夫人の受胎説話に取材したもので、釈迦の入滅後の復活を描いた《出現》と共に、二度目の日本美術院賞(大観賞)を受賞した青年期の代表作である。満天の星空のもと、白象から放たれた光が東屋に腰かける摩耶夫人に降り注ぐ情景を表わしており、釈迦誕生の場面と我が子誕生の思い出を重ね合わせることを意図したという。群青を塗り込めて地色とし、金泥や緑青を浮かび上がらせた色彩表現が、主題解釈にいっそうの深みを与えている。

【作家略歴】
1930(昭和5) 広島県豊田郡瀬戸田町(現尾道市)に生まれる
1945(昭和20) 学徒勤労動員中の広島陸軍兵器支廠で被爆
1947(昭和22) 東京美術学校(現東京芸術大学)に入学
1952(昭和27) 同校を卒業後、新制となった東京芸術大学副手に就任。前田青邨に師事
1953(昭和28) 第38回院展《家路》ではじめて入選
1959(昭和34) 被爆の後遺症に悩まされる中、第44回院展《仏教伝来》で入選
1962(昭和37) 第47回院展《受胎霊夢》《出現》で受賞。東西宗教美術の比較のために渡欧
1966(昭和41) 東京芸術大学第1次オリエント調査団に参加
1968(昭和43) はじめてアフガニスタンから中央アジアに至るシルクロードを取材
1973(昭和48) 東京芸術大学教授に就任
1989(平成元) 同大学長に就任
1998(平成10) 画業50年展を開催。文化勲章を受章
2000(平成12) 奈良、薬師寺玄奘三蔵院伽藍「大唐西域壁画」を完成
2001(平成13) アフガニスタン、バーミアン大仏の破壊について抗議声明を発表
2009(平成21) 東京都中央区の病院にて没
名称 受胎霊夢 じゅたいれいむ
作者名 平山郁夫 ヒラヤマ・イクオ
時代 昭和37年
材質 紙本彩色
サイズ 179.5×178.8
員数
その他の情報
指定区分
分野